初めてのロングツーリング(ジェベル200)

たった20馬力のジェベル200でしたが、自転車しか知らない身からするとバイクすげえっ‼ 

ていうのが実感でした。MTBでひいこらひいこら上っていたいつもの道をアクセルひと捻りで何事もなく登坂していくことに畏怖にも似た感覚を持ったものです。

そんなもんだから、バイクに乗り始めて1週間。まだ走行400キロくらいで慣らし運転中のところ、ゴールデンウィークの帰省をバイクでしよう。広域地図で見る限り往復600キロくらいの様だし、ちょうど慣らし完了で戻ってこれるだろう。と思い立ちました。

それが初めてのロングツーリングです。1996年4月の末でした。

当時は周りの友達にバイク乗りが多かったので装備のこともなんとなくは分かっていましたが、諸事情でフリーター状態だったためオフロードグローブと汎用品のカッパと荷造りネットくらいしか準備できませんでした。

上下ジーンズのインナーとして自転車用の上下ジャージ、靴はトレッキングシューズっぽいタウンシューズ。格闘技で使っていたエルボーパッド。これで高速道路はちょっとやばいかなぁ。とは思いましたが、好奇心の方が勝ってました。もうワクワクでいっぱいというか。友達からもらった年季の入ったツーリングマップ(まだツーリングマップルじゃなかった頃の)と、バイトしていた本屋さんで割安で買わせてもらった地図を眺めてノリノリでルートを決めました。

どうせならいろんな道を走ってみようと、当時住んでいた東京のアパートに一番近いインターから中央道に乗り、河口湖で一旦降りて、樹海の中の県道71号を走り、東名の富士インターで再び高速に。浜松インターで降りて国道1号線と浜名バイパスで国道42号線へ。42号線で伊良湖岬へ。そこからフェリーで実家まで。と。

ノリノリ過ぎて、この時点で往復600キロは優に超えることは忘れていました。   

出発当日、朝4時前だったかな。自宅に一番近い稲城インターから中央道に入ろうとしたら、そこからは新宿方面にしか行けないことに気づきました。いきなりのミスで、これって違反??と、心臓バクバク状態で料金所で事情を話すと、よくあることらしく手際よくエスケープさせてくれて無事に一般道へ出ました。無事に。とは言え焦りまくりでバイクを押し引きしたので、車体の軽さの恩恵を実感できました。                    

その後2番目に近そうな調布インターに行こうとしましたが、稲城インターから乗るつもりでいたので道が分からず住宅街に迷い込んでしまいました。自転車では走ったことがあるはずなんですが、なんだかバイクから見る景色は別の道に見えたんですよね。グルグル回って是政橋近くの交番で道を教えてもらったりもしましたが、結局国立府中のインターを見つけてそこから八王子方面を目指しました。全くの逆方向。方向音痴もいいとこでした。

ただ、こんなことでも冒険してる感があって無性に楽しかったですね。

一路、河口湖へ。といきたかったですが、ジェベル200で初めての高速道路。制限速度は80キロでしたが、その速さで走ろうとすると、なにこれエンジン壊れる?というくらいに唸る唸る。一般道では60キロくらいが一番気持ちよかったのでそれ以上出したことがなく、経験したことのないエンジンの振動で不安になりました。

それから、風。走行風。自転車好きだったので風は慣れているつもりでしたが、60キロ超える世界ってこうなんだ。と新鮮な驚きというか。当時のヘルメットの作りのせいもあるかもしれませんが、首を後ろに持っていかれそうに感じました。これは程なく慣れて70キロくらいで走っていましたが、相模湖を越えた辺りから体が動かなくなっていることに気づき始めました。必死に走っていたので自覚が持てなかったのですが、山の冷たい風に変わってどうやら体が冷えてきています。更に振動を無意識に抑えようとするのか、ハンドルを握る両手や上半身がものすごく力んで強張っています。上半身だけでなく脚も変にニーグリップを意識しすぎてつりそうです。

そう気づいて、休もう。と思いましたが体が言うことをきかない。うろ覚えですが藤野パーキングエリアに入り損ねました。で、なんとか談合坂サービスエリアには入れました。

バイクを停めたものの、全身ガチガチでサイドスタンドすらなかなか出せない。しばらく跨ったまま休んでからゆっくりサイドスタンドを出して、倒さないように慎重に降りました。その頃はまだリアキャリアが付いていなくて、荷物もそれ程積めず、軽いはずの車重がものすごく重く感じました。立ちごけたりはしませんでしたが、ウインドスクリーンとハンドガードは絶対に付けよう。ウエアは専用のものを着よう。あとギア比をどうにかしよう。と固く思いました。

後から地図を見ると実際走ったのは大した距離ではないんですよね。4月末で暖かい気がしても、早朝の高速道路をバイクで走るとはこういうことなんだと良い経験になりました。

そういえば購入店の店長さんに、高速道路は80キロ以上出さないで、そういう作りのバイクじゃないから。といわれていたんでした。身をもって意味が分かりました。

とりあえず、トイレを済ませ、ホットの缶コーヒーを飲んで、持ってきたカッパを防寒着代わりに来て、再出発しました。

その後は慣れのせいもあるでしょうがまあ快適に河口湖で降りて、国道139号を山梨県道71号に向かいました。下道はジェベル200にとって、最適なシチュエーションでした。さっきの高速道路でもそうでしたが、煽ってくるような車両は1台もなくて、いたって平和。気のせいなのかも知れないですが、世の中が今よりはゆったり流れて、世情もバイクに優しかった様に思います。

旅は続きます。県道71号に入って樹海の中を進みます。気分はアドベンチャー。アドベンチャーバイクなんて言葉はなかった時代ですけど、脳内アドベンチャーでした。

途中停車して樹海内に恐る恐る入ってみたり、コンパスがホントに乱れるのか試してみたり(乱れませんでした)子供っぽい遊びをしてました。

足場の悪い道で何度も停まって走ってを繰り返しても、やっぱり扱いやすい車体で初心者には頼もしかったです。随分後にツーリングセローじゃない普通のセロー250にも何時間か試乗させてもらう機会がありましたが、軽さと足つきは圧倒的にジェベル200有利でした。

勿論、車体の高級感や高速道路の安定感等々とトレードオフです。セロー250は100キロ巡行普通にできますし。

そうこうしているうちに富士インターが近くなってきました。気温も上がってきてちょっと暑いくらいでした。ここでカッパを脱いだんですが、気がつかないうちに蒸れて全身汗だくになっていました。安価な汎用品で透湿素材ではありませんしベンチレーションもないですから当然なんですが、やっぱり今度はカッパも専用品買ってみようと思いました。思ったものの、もったいないのでその後1年以上防水性がなくなるまで使うことになるんですが。新しいことが実経験として色々分かって楽しかったですね。

インター手前のガソリンスタンドで満タンにして、東名高速道路に乗りました。もう寒くはないし速度にも振動にも風にも慣れて順調に80キロ巡行します。今、乗っているヴェルシスX250と比べても、アナログの速度計と距離計くらいしかついていない簡素なバイク。でも高揚感がありましたね。60キロくらいまでは出足が早かったし。メーカーの味付けなのかも分からないですが、その後に乗ったジェベル250XCや代車で貸してもらったアドレス125、友達にちょっと乗らせてもらったカタナ400Sも出足が良くて面白いバイクでした。

そんな感じですから、パーキングエリア、サービスエリアには毎回寄っていた気がします。合流でフル加速させるのが楽しくて。                                   

まあフル加速といってもそれでようやく車の流れに乗れる程度ですし、慣れたとは言え物理的に振動はあるので疲労は蓄積します。休まず一気乗りはできません。ある意味最強の安全装備というか。

まだまだ旅は続き、天龍川を渡ります。開放的な景色で高揚感が更に高まりますが、そろそろ浜松で高速を降ります。インター出口からしばらく行った先の路肩で地図を確認し浜名バイパスに向かって進んだつもりになるも、どうやらまた逆方向の様です。天竜川上流に向かって進んでいました。あまりにも道が良いのでこのまま天龍スーパー林道へ!!と、ちょっと思いましたが、さすがにフェリーの最終便に間に合わなくなるので理性でこのツーリングハイ状態を抑えました。

引き返して、浜名バイパスへ。当時はまだ有料道路で通行料200円だったかな。

この時だったと思いますが、料金所のおじさんに「ごめんね。原付は入れないんだよ。」と制止されました。ジェベル200はジェベル125と車体共通で、ぱっと見は原付2種に見えるっぽいです。同じことが別のツーリング時に東名の料金所でもありましたし、通勤で使っているときは、原付1種に見えたらしく速度超過じゃないかと交番の前で止められたりしました。(当時はフルサイズのギア付き原付もまだ走ってましたもんね。)毎回ナンバーを見せて謝られて終わりなんですが、そこまで小さく見えるか?とちょっと可笑しくなりました。

それにしても、なんかこう料金所で通行料を払う。というのも自分には旅してる感があって乙なものでした。今はそうでもないですが。

高速道路の様な浜名バイパスをしばらく走っると見えてくる浜名湖の入り口に掛かる浜名大橋辺りの景色は、なかなか雄大で停車したくなります。禁止でもあるし、危なすぎて絶対にできませんが。

快適な浜名バイパスを終点で降りて、いよいよ国道42号線へ。現在はとても分かりやすい道になっているところも、当時はけっこう迷いました。ああでもないこうでもないと地図を確認した記憶があります。今となってはどうなっていたのか思い出せません。写真等撮っておけば懐かしく見返せたんですよね。そういう道や場所っていっぱいあります。でもその時は微塵も思わないんですよね。昨日カメラを新しく買ったので、そんな使い方もしてみたいと思っています。

かくして国道42号線を伊良湖岬に向かって進みます。子供のころ家族で静岡や山梨に行くとき等に何度か乗ったことのあるフェリー乗り場へのルートを逆に進んでいる格好です。田舎の真っ直ぐ一本道という感じなのに、ほぼ全線追い越し禁止です。時々極低速で農業用の軽トラやトラクターが通行もします。

けど、ジェベル200なら大丈夫です。余裕です。苦痛なくのんびり進めます。ツーリングセローを除く(盗まれてしまったので)今まで所有した全てのバイクでこの道を走っていますが、このたらたら走行の性能はジェベル200がダントツです。

旅もそろそろ終盤になりますが、伊良湖岬のフェリー乗り場に至る残り数キロも楽しい道になっていて、山岳道路の様な急勾配のワインディングから、太平洋が見渡せるシチュエーションがしばらく続きます。

おととし、この辺りの遊歩道をじっくり歩いてみたら、島崎藤村の椰子の実の歌碑があったりしました。

最後の長い坂を下って、直後の右カーブ後に交差点があり、そこを左折するとフェリー乗り場、道の駅伊良湖クリスタルポルトです。乗れたのは最終便かその1本前の便だったと思います。 

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フェリーに乗船するとき初めてのことで床が滑りそうに見えて緊張しましたが、難なくでした。フェリーの乗船時間はだいたい1時間。フェリーを降りたら5分で実家です。

実家で家族から、よくこんな細いタイヤで来れたな。と感心され、そこ?!って思いましたが、そう言われてタイヤを見てみると純正タイヤは、特に前輪は確かにMTB並みかもでしたね。そんな目で車体を見ると確かに華奢で大きくはなく、こんな小排気量車でここまで来たんだな。と感慨深いものがありました。

結局片道400キロ以上12時間くらい走っていました。高速道路が辛いとかは置いといて、初めてのバイクをこれにして良かったと思ったのを覚えています。かなり後にジェベル250XCに乗ったときの感想は、初心者当時無理してこれを買わなくて良かった。という感じです。乗ってたら乗ってたで別の楽しみ方があったのかな。とも思いますが、車体の大きさとパワーで200程気楽に付き合えなかったんじゃないか。と。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

次回は、この後帰省先でどうなったかを書こうか、それとも他のことにしようか考え中です。

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